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生葉で、初めて、Ferredoxin (Fd)-dependent Cyclic Electron Flow around PSI (PSI-CEF)の活性検出に成功!新規サイクリックの存在を発見!

In vivo生葉で、初めて、フェレドキシン(Fd)依存のPSI循環的電子伝達反応 (Fe-cyclic electron low around PSI, PSI-CEF) の活性検出に成功、そして、in vivoでFd-CEFの活性制御を明らかにすることができました。詳しくは、以下の二つの論文を参照してください。

 

1.      Ohnishi M, Maekawa S, Wada S, Ifuku K, Miyake C. Evaluating the Oxidation Rate of Reduced Ferredoxin in Arabidopsis thaliana Independent of Photosynthetic Linear Electron Flow: Plausible Activity of Ferredoxin-Dependent Cyclic Electron Flow around Photosystem I. Int J Mol Sci. 2023 Jul 29;24(15):12145. doi: 10.3390/ijms241512145. PMID: 37569521; PMCID: PMC10419245.

2.      Maekawa S, Ohnishi M, Wada S, Ifuku K, Miyake C. Enhanced Reduction of Ferredoxin in PGR5-Deficient Mutant of Arabidopsis thaliana Stimulated Ferredoxin-Dependent Cyclic Electron Flow around Photosystem I. Int J Mol Sci. 2024 Feb 26;25(5):2677. doi: 10.3390/ijms25052677. PMID: 38473924; PMCID: PMC10931702.

 

Fd-CEFの活性v(CEF)は、以下の反応式で表現されます。

 

              v(CEF) = k x (PQ) x (Fd-)                  eqn.

 

光化学系I (PSI)で還元されたFdは、Fd-CEFのメディエーター(仮想的にFd-quinone oxidoreductase, FQRと呼ばれる)の活性k (FQR量、比活性)に依存して、酸化型プラストキノン (PQ)に電子を与える。v(CEF)は、これまで見かけのPSI量子収率[Y(I)]で評価されてきましたが、この方法が全く使えないことを、その根拠をもって報告してきました(Furutani R, Ohnishi M, Mori Y, Wada S, Miyake C. The difficulty of estimating the electron transport rate at photosystem I. J Plant Res. 2022 Jul;135(4):565-577. doi: 10.1007/s10265-021-01357-6. Epub 2021 Nov 15. PMID: 34778922.)。評価方法は、その原理を知り尽くして使用しないと、大きな間違いに至ります。ボタンひとつで多くの情報が得られる機器はルーティン・ワークにはいいでしょうが、サイエンスで論文公表するためには原理の理解が不可欠です。常に、自分の測定方法が正しいのか、何を見ているのか、ここが欠落すると、学生さんに間違った論文を書かせることになってしまいます。さらに、クロロフィル蛍光解析におけるminimum Chl fluorescence yield (Fo)の値の変化、還元型FdによるFoの増大がPQ還元をもたらすFd-CEFの活性であるという方法も多く報告されています。このFo増大評価方法がFQRによるFd-CEFを反映しないことはDavid Kramerのグループが既に立証しています。詳細は彼の論文をご参照ください。Fo増大は、FdがPSIIへ電子を与えていることを見ています。しかも、その速度は光合成リニアー電子伝達反応に貢献する能力は持っていません。

              このような状況で、David Kramerのグループは、プラストキノンからPSI反応中心クロロフィルP700への電子伝達鎖HPCでの電子伝達速度評価方法を確立しました(Sacksteder CA, Kramer DM. Dark-interval relaxation kinetics (DIRK) of absorbance changes as a quantitative probe of steady-state electron transfer. Photosynth Res. 2000;66(1-2):145-58. doi: 10.1023/A:1010785912271. PMID: 16228416.)。この論文の解析アイディア、大好きですね。非常にリーズナブルです。ただ、この方法を行うためには、P700のみならずプラストシアニン(PC)そしてシトクロムf (Cy f)の酸化還元をも解析しなければなりません。ここで得られる電子伝達速度HPCrateとします。HPCrateが、Fd-CEFの電子伝達速度を反映することはラン藻で初めて示されました(Theune ML, Hildebrandt S, Steffen-Heins A, Bilger W, Gutekunst K, Appel J. In-vivo quantification of electron flow through photosystem I - Cyclic electron transport makes up about 35% in a cyanobacterium. Biochim Biophys Acta Bioenerg. 2021 Mar 1;1862(3):148353. doi: 10.1016/j.bbabio.2020.148353. Epub 2020 Dec 18. PMID: 33346012.)。上手に実験がデザインされ、なるほどと納得できます。

              我々は、Fd-CEFの活性評価を直接にFdの酸化還元レベルおよびFd酸化速度をモニターすることで行いました。シンプルな系です。その結果、PQの酸化レベルによりv(CEF)が制御されること、その制御がFd-CEFをモデリングしたAllen (2003)のモデルに従うことを見出しました。そして、還元型Fdレベルの増大に伴い、v(CEF)活性が増加すること、これもまたAllenモデルに従うことを明らかにしました。これまで、Allenモデルに従うFd-CEF活性は全く報告されていませんでした。このシンプルなモデルは強力です。v(CEF)は、光合成が抑制される乾燥、強光などの環境ストレス条件で、低下します。つまり、これまで世界中で議論され主張されてきたストレス緩和にFd-CEFが機能するという主張は崩壊します。むしろ、光合成速度の増大とともに、v(CEF)は増大します。これまでとは、まったく違う状況でFd-CEFは機能します。このような事実に出会うとワクワクしますね。そして、その生理的役割、気になりますね。私どもは、このことに対して、根拠をもって生理機能を提唱しています。光合成電子伝達制御、巧妙に出来上がっていることに感心せざるを得ません。再現性あるデータから導いてきた理論が継続性・展開性のある筋書きをもたらすことを日々体験できることがサイエンスの楽しみの大きな要因でしょうね。目の前の再現性のある事実を理解する、学生さんと喜ぶ、サイエンスの醍醐味ですね。

              今回の発見に基づき、学生さんが主体性をもって次の実験計画を立てています。彼らの解析が楽しみです。また、近いうちに報告できるでしょう!

 

ちなみに、私どもが発見したFd-CEFの活性は、古典的なNDH (NADH dehydrogenase)あるいはPGR5/PGRL1とは全く関係ありません。それらが欠損した変異体でも、我々が見出したFd-CEF活性は影響されず、むしろ活性が増大します。その理由は、理論的に論文の中で記載しております。つまり、ようやく光合成リニアー電子伝達反応の速度に匹敵するFd-CEF活性(新しいサイクリック活性)を発見し、その分子メカニズムに迫る段階に入りました。そして、このことにより光合成におけるFd-CEFの本当の役割が明らかになります。楽しみですね!

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