光呼吸のエレクトロン・シンク能の進化:陸上植物が光呼吸を有効に利用し始めた
この9年間で光呼吸に対する認識が随分と変わりました。Rubisco の性質を考えると、進化上、現在のC3植物からさかのぼっていくとRubisco によるカルボキシラーゼ反応の効率は低下しオキシゲナーゼの効率が高くなっていく。これは、あくまで Rubisco の生化学的解析から導かれたストーリーである。つまり、シダ、コケ、藻類そしてシアノバクテリアで機能しているRubiscoほど光呼吸活性が高いと予想されてきた。 しかしながら、林くんが2014年に報告した論文では、シアノバクテリアでCO2枯渇に伴って光呼吸の駆動は認められなかった。まずは、これに驚きました。予想と異なる!その後、嶋川くんが2016年に報告した論文では、多くの藻類で光呼吸能の活性が無視できるほど小さかった。なんで?! そうこうしているうちに、瀬島くんが生葉を用いた光呼吸活性法を考案し報告しました(2016)。この報告では、光呼吸の活性を精度よく評価できること、またそのための光合成解析理論の構築を行っております。非常にロジカルに解析できており、速やかな光呼吸のin vivo評価が可能と
ASPB Plant Biology 2017
「P700 酸化システム (P700 Oxidation System)」を発表する機会をいただきました(http://plantbiology.aspb.org/)。
P700 Oxidation System に関する新しい論文が公開されました。
Plant Journal オンライン (Accepted manuscript online: 5 April 2017) (DOI: 10.1111/tpj.13566) に論文「Chloroplastic ATP synthase builds up proton motive force for preventing reactive oxygen species production in photosystem I」(第1著者:高木大輔くん)が掲載されました。これは、「P700 Oxidation System (P700 酸化システム)」における重要な役割をになうプロトン勾配を調整するメカニズムが実際にATPaseを介して駆動されていることを示すものです。このメカニズムは、「P700酸化システム」のモデルにおいて、gH+ として表記されています。この gH+ は、光強度の変化、光合成速度の変化に応答し、"P700酸化" に大きく貢献します。このgH+がうまく機能しないと、P700酸化に失敗し、活性酸素 (ROS) 生成いたること、光
9年間の研究の集大成記事を掲載しました。
現在は、私こと三宅親弘は、神戸大学大学院農学研究科の植物栄養学研究室に所属しております。幸いにも、神戸大学に赴任したあと学生さんらの協力を得て、新規な生理現象に出会うことができました。そして、その存在の理由も明らかにすることができ、植物光合成研究での酸素代謝において物事を理解する立位置を確立できたことは幸せなことです。私が神戸大学の学生さんと一緒に行った研究で確立できたコンセプト「P700酸化システム」は、植物・作物が自然フィールドで安全に光合成できるための必須のメカニズムを与えるものでした。