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光化学系I (PSI) の電子伝達活性評価は難しいですね、、、

  • 執筆者の写真: Chikahiro Miyake
    Chikahiro Miyake
  • 2021年11月18日
  • 読了時間: 2分

先日、古谷さんの論文がJPRに公表されました(The difficulty of estimating the electron transport rate at photosystem I | SpringerLink)。光合成の仕組みを明らかにする研究の中で、これまで測定されてきた光合成パラメータの妥当性を今一度見直していました。そして、PSIの電子伝達活性の評価法に疑問が生じました。評価の前提が?評価最中にPSI反応中心クロロフィルP700のレドックス状態が変わってしまっている、という問題 [Y(I)問題] に直面しました。問題を見出さすのはいいのですが、ではいかにそれを実証するか?という技術的課題に直面します。Figure 1では、実証に成功しました。P700への電子供与体が酸化状態にある、これは光合成が進行しているとき普通に観測されることです。強光であったり、気孔閉鎖状況など光合成効率が低下し、ROS生成の危険性が生じているときです。このとき、相対的なPSI電子伝達活性とされていたY(I)が過大評価されることが明らかになりました。PSIの電子受容体であるPSI複合体内部のFx, FA/FBそしてFerredoxin (Fd)が還元状態にあるときは[Y(NA)が観測されるとき]、Y(I)は過小評価されるということはSchreiber先生が既にご自身の論文1994年に指摘しています。ただ、これに関してはセオリーを理解せずにY(NA)が観測されY(I)が低下していればPSI電子伝達活性が低下した、とする論文が多く報告されています。ボタン一つで解析数値が表示される機器使用の怖さですね。古谷さんの論文では、Y(NA)とY(I)の関係のように、Y(ND)とY(I)の関係が新たに示されたわけです。怖いですね。

それでは、PSI反応中心クロロフィルP700への電子伝達速度vP700がPSI電子伝達活性を評価しているかというと、これも使用できないパラメータです。このことは、この問題点を見出し解析法を示されたDavid Kramer先生の論文にわかりやすく記載されていますので、オリジナリティを尊重すべく、Sacksteder and Kramer (2000)の論文をご参考にして下さい。

ですので、現状、PSI電子伝達活性を評価できる方法がないことになります。難しいですね。ただし、酸化型P700, (P700+, Y(ND))だけは、どんな時でも正しく評価されています。これは、パルス照射に依存しないパラメータですから。ですので、これまで私たちが明らかにしてきたP700酸化システムの評価に関して何も変わらない状況です。

 
 
 

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