見てわかる「光合成のしくみ」と「活性酸素(ROS)生成抑制のためのP700酸化」

古谷リウさんの総説が掲載されました(https://doi.org/10.1016/bs.abr.2020.08.001)(Advances in Botanical Research)。東京工業大学・久堀徹先生に執筆の機会をいただきました。あらためて、久堀先生にお礼を申し上げます。

多くの作物が属するC3被子植物で、光合成の場である葉緑体チラコイド膜光化学系I(PSI)でROS、とくにスーパーオキシド・ラジカル(O2-)が生成することは、浅田浩二先生、高橋正昭先生の優れた多くのご研究で周知のことでした。一方で、80年代後半にPSI反応中心クロロフィルP700が、光合成効率が低下するとき酸化されP700+が蓄積することが報告されていました。P700+の生理的役割は長い間わからず熱散逸などの機能が提案されたりしていました。このことに対して、2014年に光合成効率が低下するときに誘導されるP700酸化現象はROS生成を抑制し、PSIを酸化障害から守る生理機能を見出しました。この事実は、その後、嶋川銀河さんの精力的な研究によりO2発生型光合成生物が普遍的にもつROS生成抑制メカニズムであることがわかりました。その後、釋さんによるRISE発見へと展開し、P700酸化のメカニズムが明らかになってきています。

まだまだ多くの課題が残されています。でも、この段階で現状の整理を行いました。これに先立ち、2020年度は、MDPI _Antioxidants に、P700酸化モデルを提唱させていただきました。CREST研究成果をまとめておかなければならないと考えたからです。Antioxidantsでは、C3被子植物が普遍的にもつ光合成の性質のみを用いて、P700酸化モデリングを行っております。そのほとんどが三宅グループの解析データに基づいております。その中で、非常に重要な論文として、門田さんによるFd解析データでした。光合成におけるFdの酸化還元反応が光合成・光呼吸により制御されている事実、これにより光合成での明反応と暗反応のin vivo挙動がすべて説明できました。この両反応が “Tight Coupling”していること、非常に理にかなっていました。

その後、新たなP700酸化の生理機能としてFd酸化レベルの恒常性の維持、これは同時にNADPH/NADP比の恒常性を生み出し、安全な光合成が営まれている大きな理由でした。P700酸化の新規な機能が解明されました。

さらに、80年代の昔に提唱されていたATP/NADPH問題も解決できました。仮に、ATP供給律速で光合成が進行したとしたら(これが起こりえるかどうか非常に疑問)、NADPH過剰になることが予想されますが、上述のようにあり得ない話です。”P700酸化” すばらしい機能ですね。無敵ですね。生体反応は、ストイキオメトリを満たさないといけない、、、根拠は何??? 結果論としてのストイキオメトリの認識が必要ですね。ただこのような議論など必要がなく、ECS decayのキネティクス、量的議論を踏まえれば問題ないということです。

古谷さんの総説は、非常に多くのことが盛り込まれています。いわゆる新しいコンセプトです。その一つ、Y(I) 問題です。これは、非常に重要なものとなりました。Y(ND)が生成してしまうとY(I)の値が何を反映するか、非常に慎重に取り扱わなければならないことが明らかになりました。原理原則に立ち返ると、新鮮な側面に出会います。ご興味がある方は、古谷さんの総説をご覧ください。

このことに関連しますが、ECS解析で得られるgH+, ECS (delta_pH +delta_psi)の関係も非常に重要ですね。変異体を使うと vH+/Y(II)の関係が崩壊し、それまで示していたgH+, ECSのデータの解釈ができない、データを使う根拠がない事態に至る事例が出始めました。この方法も慎重に丁寧に扱う必要があることが明らかになってきました。

いろんなことが明らかになってきますね。わかりますね。すべてをやれるのかなぁと、思う時があります。まぁ、少し少しずつですね。

このようなことを踏まえて、「見てわかるP700酸化モデル」が描かれています。ご興味がある方はどうぞ。非常にわかりやすく、実験しながら、データを取得しながら、P700酸化の醍醐味を解析できるというものです。

お楽しみください。

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