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光呼吸論文_その2

ここでは、今回の光呼吸解析で新規に明らかになったことを紹介します。

非常に重要なことでした。葉緑体光合成電子伝達反応において、光化学系I (PSI)反応中心クロロフィルP700酸化にかかわるシトクロムb6/f複合体でのプラストキノール酸化反応は、これまで長い間チラコイド膜ルーメン空間でのプロトン蓄積、つまりルーメン酸性化により抑制されると考えられてきました。海外の研究者が見出して提唱しています。プラストキノール酸化反応の抑制は、PSIへの電子の流れを抑制するのでP700が酸化されます。しかしながら、今回、我々は、コムギ生葉において光合成の抑制とともにチラコイド膜ルーメン酸性化が生じないにもかかわらず、P700酸化が生じていることを世界で初めて見出しました。まさか、高等植物の生葉で、この生理現象に出会うとは思いもしませんでした。

なぜなら、この生理現象(チラコイド膜ルーメン酸性化なしにP700が酸化されるという事実)は、ラン藻で見出されていた事実です。そして、この生理現象は、世界で初めて私たちが見出したもので、RISE (reduction-induced suppression of electron flow)と名付けました(Shaku et al. 2016, Shimakawa, Shaku et al. 2018)。現在、少しずつ、引用していただいております。プラストキノンの還元レベルが大きくなると、シトクロムb6/f複合体でのプラストキノール酸化反応の抑制が生じます。非常に重要な事実です。つまり、光合成が抑制され、プラストキノンの還元が進行すると、RISEによるP700への電子伝達反応の抑制が生じます。これもまた、光合成抑制とともにPSIでの活性酸素生成を抑制するためのP700酸化が目的です。RISE現象は、光合成生物の進化過程で保存されてきたことが明らかになりました。高等植物で観測されたこと、非常に感動です。重要だからこそ、今も引き継がれて、機能していると考えます。

ラン藻で、RISE現象を発見した時、釋さんとあーでもない、こーでもないと多くの議論を重ねたことが懐かしい限りです。新しい生理現象に出会うこと、一方で新しい解析手法を開発すること、どちらが先でも、光合成生理と酸素、活性酸素を解析している私としては楽しい限りです。

今も、新しい生理現象に出会って、楽しみながら解析を進めている学生さん、スタッフの日々の研究を応援しています。私の役目は、日々目にする不可解な事実を見逃さないようにすることですね。多くの、新規な生理現象に出会えそうです。

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10月2日より、3回生が3人新たに所属されました。和田先生がモリモリご研究されている光呼吸のお仕事に携わる学生さん二人、私の研究に一人ですね。今年は、いつもと違い、すぐに研究テーマを決定してのスタートです。ご要望があったので、新たな取り組みです。皆様、よろしくお願いします。

先程、自分のウェブページを見て改めて、「研究活動」に記載している内容が古いことに今更ながら気づきました。記載後、非常に研究が進み、多くのことが新しくなっています。いけませんね、、、、徒然にと思っていると、、、、このような事態に至ります。もう少し、徒然さを改善しつつ、取り組みたいと思います。

2020年に提唱していたPSIでの活性酸素(ROS)生成とその抑制モデル(Antioxidants 2020, 9(3), 230; https://doi.org/10.3390/antiox9030230 - 11 Mar 2020)の実証に成功しました。PSIでのO2還元によるH2O2生成の発見(メーラー反応, Mehler 1951)に始まる光合成生物でのROS代謝研究は、その後O2還元の

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