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「P700酸化システム」総説

「P700酸化システム」の総説がFrontiers in Plant Scienceに掲載されました(https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpls.2018.01617/abstract)。嶋川さんの最新の成果が多く記載されています。

「P700酸化システム」の名前を最初は「活性酸素(ROS)生成抑制システム」と名付けました。光合成生物が環境ストレスを被ると活性酸素が生成します、というくだりはいたるところにその記述が認められます。植物科学のテキスト、いろんな論文、レビュー、資金獲得のための申請書などなど。これは、光合成をおこなうオルガネラ(葉緑体)のチラコイド膜光化学系I (PSI)で活性酸素が生成する(メーラー反応)と主張するものです。

しかしながら、2014年Sejimaさんの論文で、植物が「活性酸素(ROS)生成抑制」のための生理応答(P700酸化反応)を明確にすることを明らかにしました。しかも、その応答は、80年代後半に生理現象として見出されて以来多くの報告がありました。そして、Sejimaさんの論文で、P700酸化の意義づけが実験的に証明されました。この時、Schreiber先生から「You are lucky guy!」と言われたことを鮮明に覚えております。P700酸化の役割の普遍性は、その後、嶋川さん、高木さん、釋さん、塙さん、研究室の皆さんが論文として報告してきましたし、また進行する研究の中で今後も示されるでしょう。

環境ストレスを被ると、つまり強光、乾燥などなどの光合成が抑制される環境では、必ずP700が酸化されます。世界中のPAM愛好家の方々が観測する生理現象です。その世界に意義付けできたわけです。

P700酸化の視点で見ると、光合成電子伝達反応、そしてその制御の多くの新しい姿が見えます。つまり、光合成生物の生きざまをROSのワールドからP700酸化のワールドへ視点を移すことができます。光合成生物が自然界で生きていく戦略ですね。この意味で、「活性酸素(ROS)生成抑制システム」ではなく、「P700酸化システム」と名付けました。

浅田浩二先生の下で、「活性酸素消去システム」を普遍的に光合成生物がもつことを学び、光合成電子伝達反応と結びつくROS代謝(活性酸素消去システム)を「The Water-Water Cycle」と浅田先生が名付けられた論文を公表(Miyake et al. (1998) 39: 821-829 Plant Cell Physiology)できたことが「P700酸化システム」の発想につながっていると自覚しております。光合成研究を「酸素」および「活性酸素」の視点で見ることをご教授いただいた浅田先生には感謝の言葉しかありません。

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