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P700 酸化ワールド ~ RISE ~

April 21, 2018

嶋川銀河氏、釋啓一郎氏の論文が掲載されました(Frontiers in Microbiology (2018) doi: 10.3389/fmicb.2018.00886)。

 

Reduction-induced Suppression of Electron Flow (RISE) is Relieved by Non-ATP-consuming Electron Flow in Synechococcus elongatus PCC 7942.

 

嶋川銀河氏、釋啓一郎氏の二人がよくがんばりました。素晴らしい事実そしてこの事実に基づく光合成制御モデルRISEの存在を世の中にさらに強く示すことができました。

 

本論文は、光合成電子伝達反応制御に関するまったく新しいコンセプトの提唱です。2016年、我々は、ラン藻で新規な生理現象に出会いました(Reduction-Induced Suppression of Electron Flow (RISE) in the Photosynthetic Electron Transport System of Synechococcus elongatus PCC 7942. Plant Cell Physiol. 57(7): 1443–1453 (2016) doi:10.1093/pcp/pcv198)。いまだかつて、誰も見たことのない生理現象に出会うことは研究者冥利に尽きます。その時の感動は忘れませんね。

   光合成電子伝達反応の速度は、電子受容体であるNADP+が十分供給されるような状況では、チラコイド膜光合成電子伝達系シトクロムb6/複合体によるプラストキノール(PQH2)の酸化反応活性により律速されると考えられてきました(Photosynthesis Control)。この律速は、チラコイド膜ルーメンの酸性化によるシトクロムb6/複合体のPQH2酸化活性の低下が原因とされています。光供給律速でない状況において、ADPのリン酸化能力はNADP+還元能力よりも速度論的に小さく、どんなに光合成CO2固定速度が大きくATP消費速度が増大してもチラコイド膜ルーメン酸性化が観測されます。つまり、必ず、ルーメン酸性化が光合成電子伝達反応において生じます。そもそも、酸性化状態が維持されないとATP生合成に支障が出ます。

   チラコイド膜 delta-pH 制御の存在に関しては、どうとらえるかで全く意義付けが異なるところはここにあります。PSII の NPQ 制御をするためにdelta-pH 制御が必要であると認識されている部分もありますが、ルーメン酸性化の成り立ちを考えれば、光合成効率の変化に対応したルーメン酸性化にNPQ形成が応答しているだけとも考えることができるんですね。そして、このことが光合成生物にとって都合がよかっただけでしょうね。

   NADPH生成に伴うルーメン酸性化は、同時にシトクロムb6/f複合体のPQH2酸化活性を低下させます。なにも、最大速度で回る必要もないわけですね。そして光合成が、ATP供給律速で機能しても何ら困ることはありません。

   私たちが見出したRISE現象は、ルーメン酸性化とは異なるシトクロムb6/f複合体によるプラストキノール(PQH2)酸化反応の活性制御です。PQH2酸化反応は、シトクロムb6/f複合体におけるQ-cycleモデルで説明されてきました。Q-cycleの概略は、今回の論文および上記論文をご参考にしてください。このQ-cycleのモデルは、よくできていますね。電子伝達反応における1電子当たりのプロトンのルーメンへの取り込み効率を高めることができますね。ルーメン酸性化の効率を上げていると考えられます。

   RISE現象は、Q-cycleにおけるPQ還元反応に着目して発案したものです。Q-cycleが機能するには酸化型のプラストキノン、PQ、の存在が不可欠です。つまり、光合成電子伝達効率が低下する状況においてPQH2が蓄積するとQ-cycleの効率は低下します。その結果、PQH2酸化活性が低下します。これは、まさしく光合成電子伝達反応にブレーキをかけることができます。自己ブレーキ機構ですね。Q-cycleのモデルそのものが、このような機構をはらんでいたんですね。

   上述の論文では、PQH2が蓄積する処理をすると、光化学系I反応中心クロロフィルP700が酸化され、しかもNADP+への電子の流れも同時に抑制される実験結果を得ることができました。つまり、P700酸化が、PQのレドックス状態に応答する初めての事実でした。

                

今回の論文では、RISEの存在を示すために、独自の実験アイディアを考案しました。新しいことを主張し、その MAKOTOSHI_YAKA さを払拭し MAKOTOSHI モデルにするためには、別の側面からの検証が不可欠です。そこで、チラコイド膜ルーメン酸性化を誘導する反応にもかかわらずPQ酸化を促進する反応を用いるとことで、P700酸化を抑える、つまりP700酸化がRISEによりもたらされることを検証しました。このことにより、ルーメン酸性化がもたらすP700酸化機構とは全く異なる新規なメカニズム(RISE)の存在を示すことができます。

   光合成が抑制され、P700が酸化されている状況で、活性酸素であるH2O2をラン藻細胞へ添加します。すると、P700酸化が抑制されNADPH生成が観測されます。ラン藻細胞へのH2O2添加は、ラン藻がもつペルオキシダーゼ反応を駆動します。この反応は、酸素発生型光合成生物に共通するものです(Nakano and Asada 1984, Miyake et al. 1991, Asada 1999, Miyake and Asada 2002)。ペルオキシダーゼ反応でH2O2をH2Oへ還元するための電子供与体(RedH2)は光合成反応により供給されます。この反応で生成する電子供与体の酸化物(Oxi)は、光化学系Iで還元されRedH2が再生します。つまり、この反応のおかげでH2O2は完全に消去されるわけです。P700が酸化されている状況でH2O2消去反応を駆動させるということは、本来、光化学系Iにおいて電子受容体を供給することを意味します。これは、さらなるP700酸化ももたらすことが容易に期待されるんですね。しかも、ペルオキシダーゼ反応によるH2O2消費はATPを消費しませんのでルーメン酸性化はさらに促進されます。ペルオキシダーゼ反応とルーメン酸性化を、世界で最初に示したのは、私のWuerzburgでのポスドク時のスーパーバイザーであるUlrich Screiber先生でした。

   現実的に、観測される事実として、ペルオキシダーゼ反応によるH2O2消去は、電子伝達反応を駆動させプラストキノンを酸化します。そして、P700が還元されます。NADPHの還元が促進されます。H2O2消去反応の電子供与体はNADPHです。NADPHは酸化されるはずなんですが還元されているんですね。面白いですね。RISEモデルは、これらの事実をうまく説明できるんですね。見事ですね。

   H2O2消去という観点から見ると、ひとたびROSであるH2O2が生成すれば、RISEを解消し速やかにH2O2を消去していると考えられます。よくできていますね。

 

今回の論文では、チラコイド膜ルーメン酸性化によるP700酸化に加えて、PQのレドックスに応じてRISEがP700を酸化することを実証しています。つまり、P700酸化システムにおけるRISEの役割をこれまでとは違う別の側面から明らかにすることができました。2016年から2年経過しました。そして、今2018年にわかりやすい論理で実証することができました。嶋川氏、釋氏の頑張りです。

   今後は、RISE現象が光合成生物が普遍的にもつP700酸化メカニズムであることを検証していかなければなりません。おそらく、近いうちに報告することになるでしょう。P700酸化システムにおけるP700酸化はROS生成抑制のために機能しています。ただ、生成してしまうROSに対しては、速やかなP700酸化抑制を行いROS消去の還元力を生み出しているんですね。

 

Frontiers in Microbiology (2018) doi: 10.3389/fmicb.2018.00886

 

 

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